逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
途中で歯切れが悪くなる基に、沙耶は何か気になることがあるのかと、肩越しに彼を振り返った。
「いや……考えてみればここからそう遠くないところに美鶴んとこの別荘があるからな。見たことがあってもおかしくない。さあ、中に入ろう」
自問自答で納得したらしい基は、沙耶の手を取り、楽しげに玄関へと向かう。
美鶴の別荘がどうとかいう基の言葉が引っかかったが、今の沙耶は夢見心地でふわふわして、頭が働かない。
雲の上を歩いているような気分で、手を引かれるがまま、玄関の前に立った。
「ほら、沙耶」
基はキーケースから鍵を取り外して、沙耶に持たせる。
「う、うん……」