逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
上の空というわけじゃない。ただ沙耶の何かを決意したような瞳が、基を焦らせたのだ。
「沙耶……言ってくれ」
本当はこんなことを聞きたくない。
だが沙耶の決意を、基は無視することなど出来ない。
だから血を吐くような思いで尋ねた。
「うん……」
沙耶は頷いて、手を伸ばし基の頰に手を乗せた。
「明日、ご家族のところに戻って」
「……沙耶は?」
一縷の望みをかけて問いかける。
だが沙耶は首を振った。
ついていかないという意味だ。
「……なんでだよ!」
思った通りの言葉に、基は激昂した。
激しい怒りに全身の血が燃えたぎる。