逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
けれど沙耶は、そんな基の気持ちを理解した上で、凛とした態度で基を拒絶した。
「私の幸せは、私が決めます」
自分の言葉が刃のように基を傷つける。
沙耶は自分を抱きしめる基が震えていることに気づいて、吐きたいくらい苦しくなったが、必死でその感情を押さえ込む。
「二人で逃げるのは簡単……だけど、それでは私は幸せになれないの」
「どうして……っ……!」
「基、『安全なところで、大事にされて、幸せになっていいんだ』って私に言ってくれたでしょう? だから私、お母さんの優しい記憶を思い出せたんだよ」
沙耶はあなたが愛おしいと思う気持ちを込めて、基の背中に腕を回した。
「あなたは愛されて育った人。あなたの愛が私を救ってくれた。そんなあなたが今まで通り、たくさんの愛で包まれて、幸せでいてくれることが、私の幸せなの」