逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
沙耶の胸の奥から、熱い塊のような何かが込み上げてくる。
「だから基。ご両親のところに戻って。そしていつか、正々堂々と私を迎えに来て。私、五年でも、十年でも、待ってるから……」
そして、沙耶はキラキラした、少女のような笑顔を見せる。
「基、大好きよ。愛してる……どこにいたって、ずっとあなたのことを思ってる。あなたが元気でいてくれたら、私も元気にやっていける」
大粒の涙を浮かべた沙耶は、基の目には朝露をたたえた花のように見えた。
こんな笑顔で自分を送り出そうとする沙耶の思いを、どうして無下にできるだろう。
「沙耶……君は本当に……強くて、たくましくて……折れない人なんだな……」
基は観念せざるをえなかった。
ポロポロと涙をこぼしながらも胸を張る沙耶の前に、降伏するしかなかったのだ。
沙耶への愛のために--。