逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「そういえば、基様から連絡はありましたか?」
神尾はデスクにつき、パソコンを立ち上げる。
「ええ。毎週必ず絵葉書が届きますから」
沙耶は神尾の好みの熱さで淹れたお茶を、彼の右手の横に置いた。
「絵葉書?」
「はい」
離れてから約三週間後、最初の葉書はニューヨークから鎌倉の別荘あてに届いた。
そして毎回、その土地の風景に
『ここで沙耶のことを思っている』
とだけ書いてある葉書が届くようになり、気がつけばすでに百枚を超えている。沙耶の宝物である。
「あの人は、いつも世界中を飛び回ってるんですね。たまに見たことも聞いたこともない土地の名前から届くから、地図で調べるのが楽しみになりました」
そうやってにっこりと笑う沙耶が、神尾には眩しく見えた。