逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 そうやってひとしきり笑った後、神尾はすました顔で手帳代わりに持ち歩いているタブレットを開く。


「来週の誕生パーティーですが、招待状をお出しした方はみな出席のお返事を頂戴しました。あと個人的にお誘いしたい方がいれば、おっしゃってください。招待状を用意します」
「個人的にお誘いしたい方なんているわけないだろ。それより三十になるのに誕生日パーティーってのが恥ずかしすぎるんだが。どうにかならないのか?」
「ご両親たっての願いですよ。区切りもいいですしね」
「……それであちこちのご令嬢を集めて集団見合いか。ご苦労なこった」


 基はあくびをかみ殺し、切れ長の目を細めてスクリーンの父を見つめるふりをする。

 そんな基をチラチラと熱っぽい目で見つめる女性従業員は少なくないが、基はどこ吹く風である。


 基はとにかく華やかな男だ。

 身長は百八十を超え、フルオーダーのスーツを着こなすために体は常に鍛えている。

 灰色の瞳に、ゆるく波打つ黒髪。顔立ちはモデル出身の、ハーフである美人女優の母によく似ていた。


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