逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 神尾のプライベートをすべて知っているわけではないが、彼に同伴できる女性がいないと言われても、にわかに信じがたい沙耶である。

 思わずジト目になった。


「いや、本当。お付き合いしても振られるのはいつも私ですから」


 だが神尾は悲しげに首を振り、それから真面目な顔をして、隣の沙耶の顔を覗き込む。


「ちゃんと誤解されないように秘書だっていいますから。ついてきてください。可哀想な私を助けると思って」


『可哀想な私を助けると思って』は、神尾の沙耶にだけ通じる伝家の宝刀だった。
 それを切り出されると受け入れないわけにはいかない。


(これも秘書の務めと思うしかないか……。)


「わかりました……」


 沙耶は生真面目に頷いた。



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