逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 沙耶は持っていたクラッチバッグからハンカチを取り出そうとした。

 するとギィ、と天空の間に通じるドアが開いて、なんと中から神尾が姿を現したのだ。


「基様、そろそろ主役の挨拶をしていただきたいんですが」


(主役?)


 ぽかんとする沙耶の前に、さらに神尾の背後から、基と同年代の男たちがぞろぞろと姿をあらわす。


「基、まだかよ。オヤジさんの挨拶長すぎるしダルすぎるぞ。あれを止められるのはお前しかいない!」
「それにしても急に呼び出されて婚約披露パーティーって、俺たち可哀想すぎないか?」
「まぁ僕は一応妻帯者だけど」
「この勝ち組がー!」


 笑いあう男性の一団の中に、なんと美鶴がいた。従兄弟も一緒である。どうやら美鶴はこの二年の間に結婚したらしい。左手の薬指に指輪が光っていた。



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