逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
今は本社に戻り、結婚前には専務になることが決まっているが、とうの基は専務の地位よりも【沙耶のウエディングドレスをたくさん見たい】ということで頭を悩ませている。
本当に、実に馬鹿馬鹿しい。
「どう思うと言われても」
「みーなーとー」
エールビルの廊下で、いきなり抱きつかれる。
それを見た女性社員たちが「キャー」と黄色い悲鳴を上げたが、湊はいたって冷静に基を押し返した。
「沙耶さんと話しあえよ」
こんなくだらない話の場合、敬語を使う必要はない。
いや、そもそも基はすでに厳密に言えば直属の上司ではないので、昔からの友人としての振り幅が断然大きい。
「おい、湊」
基が妙に神妙な顔をして湊を見据える。