逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「……俺」
基が切れ長の瞳にうっすらと涙を浮かべ、それから花開くような笑顔になった。
「父親になる」
「……おめでとう」
驚いたが、実際めでたいことには違いない。
その瞬間、基は弾けたように湊に飛びかかり、犬でも撫で回すかのようにハグをする。
「いや、嬉しいけど、どうしたらいいんだ!? とりあえず家事なんかせずに寝かせておきたいんだけど、沙耶は全然言うこと聞かないし、ほんと、どうしよう!」
「……とりあえず落着けよ」
自分でもなかなか認めたくないのだが、どうやら自分はこの男に頼られるのが、嫌いではないのだ。