逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「……俺」


 基が切れ長の瞳にうっすらと涙を浮かべ、それから花開くような笑顔になった。


「父親になる」
「……おめでとう」


 驚いたが、実際めでたいことには違いない。


 その瞬間、基は弾けたように湊に飛びかかり、犬でも撫で回すかのようにハグをする。


「いや、嬉しいけど、どうしたらいいんだ!? とりあえず家事なんかせずに寝かせておきたいんだけど、沙耶は全然言うこと聞かないし、ほんと、どうしよう!」
「……とりあえず落着けよ」


 自分でもなかなか認めたくないのだが、どうやら自分はこの男に頼られるのが、嫌いではないのだ。



< 319 / 322 >

この作品をシェア

pagetop