逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 番人のような神尾がその場を離れると、今度は色とりどりの、淡い色のドレスを着た女性が、花に吸い寄せられる蝶のようにわらわらと集まってきた。


「基様、これ、わたくしから基様へのプレゼントですわ」
「あら、私だって直接お渡ししたくて機会を狙ってましたのに。ズルいんじゃなくて?」
「これ、父に言って英国で作らせましたのよ。フルオーダーのカフスですわ。本物の天然石を贅沢に使ってますの、基様はビリヤードがお好きだって聞いたからそれをモチーフにして」


 十代の少女から、基より年上の女性まで、気がつけば十人ほどに取り囲まれてしまった。

 彼女たちのキャアキャアと黄色い声が頭に響く。

 それでも基は笑顔を作る。
 それがエール化粧品御曹司の不二基に課せられた義務だからだ。

 そうやってしばらくの間、欲しくもないプレゼントを受け取ったりお愛想を言っていると、入り口のあたりがザワザワと騒がしいのに気付いた。



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