逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
(俺が入ってその雰囲気をぶち壊すのもな。遊びたいやつは遊ばせておけばいい。)
その場所を離れようとしたら、凛と響く軽やかな声が聞こえた。
「私の名前に意味はありますか」
その声に聞き覚えがあると思う以前に、涼しげな声は基に頭痛を忘れさせた。
とっさに基は、人だかりをかき分けて輪の中に入る。
一人の女性がソファに優雅に座っていた。
黒のバックロングドレス。正面は膝丈だが、そこからすらりとまっすぐに長い足が見える。余計なアクセサリーを何一つけていない、白い肌が映える、漆黒のドレスだ。
「そうだね。薔薇にどんな名前をつけようとも薔薇は甘く香る」
「だがその花の名を呼びたいと思うのは当然だろう」