逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
どうしてだろう。膝がすごく柔らかい。
マノロ・ブラニクの靴には、何か魔法でもかかっているのだろうか。
管弦楽団と並ぶピアノに向かって歩きながら、沙耶はそんなことを思う。
三歳から始めたクラシックバレエ。
父の会社が倒産する直前までなんとか続けさせてもらったけれど、ブランクは十年近くある。
けれどここはバレエの教室でも発表会でもない。
ただのいけ好かない御曹司のパーティーだ。
みんな彼に自分を見てもらいたくてやってきているのだから、私が恥をかいたって構わない。
そう、笑われるなんてどうってことない。
沙耶は決意した。