逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 この曲は、沙耶が通っていたバレエ教室のクリスマス会で、留学する教室の先輩への餞別と、教室のみんなで踊った曲だった。

 教室に入ったばかりの小学生でも踊れるようにと、バレエの要素を盛り込みながらも、モダン、ジャズと「楽しい!」を詰め込んだダンスである。

 
 左手の和音跳躍に、ステップが弾む。
 右手の和音とオクターブに、ぴょんと足が上がる。

 たとえどれだけブランクがあっても、子供の頃の純粋な思いは忘れることはない。


 クラシカルなドレスのスリットから、沙耶の白くて長い足が軽やかに踊りだす。
 マノロ・ブラニクが紡ぐ華麗な音が響き渡る。

 踊りながら独特の高揚感に包まれた沙耶は、棒のように突っ立っている基に駆け寄り、手をつかんだ。


「なっ、なっ、なんだ!?」
「ダンスを申し込むのは私からだっていいでしょ、王子様」
「はぁぁぁあ!?」




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