逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 ワルツといえど、スローワルツどころかかなりのスピードである。

 くるくると回り踊る基と沙耶に、自然と周囲は魅入られて、いつの間にか拍手まで送っていた。

 この場にいる人間は、完全に、沙耶に魅せられてしまったのだ。


 そして二人のダンスは熱狂のまま終わった。

 沙耶は満場の拍手に頭を下げ、それから隣で沙耶の手をつかんだままの基を見上げだ。


「これが何も持たない私から、あなたへのプレゼントよ。お誕生日おめでとう」


 その言葉に嘘はなかった。

 冷やかしで呼ばれたパーティではあるが、いくつになっても誕生日はおめでとうだと思う。

 ずっと記憶の底に押し込めていたが、母が生きていた頃、沙耶の誕生日パーティーは毎年盛大に祝われていたのだ。

 その頃もこうやって、ダンスを踊ったことを、昨日のことのように思い出していた。



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