逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「楽しかった」
熱に浮かされたような沙耶の目、上気した頰、赤い唇。
見る者を魅了する、はつらつとした美しさを沙耶は基に惜しげもなくさらけ出したのだ。
「沙耶……」
次の瞬間、基は両腕を伸ばし沙耶を抱きしめていた。
基はこの場の状況などなにも考えていなかった。ただ目の前にいるこの美しい存在を抱きしめないと、消えてしまうような気がして、考えるよりも先に手が出たのだ。
「きゃっ!」
慌てたのは沙耶である。
ダンスで抱き合うのとはわけが違う。
彼の胸を押し返し、その場から離れ、くるりときびすを返してしまった。