逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「……まだか」
神尾を通すとバレるので、直接庶務課に行って、クリーニングサービスのソルシエールの契約内容を確認したところ、常務室の掃除は希望があればということになっていた。
確かに基はあまり会社におらず、外で会議に出てばかりなので、部屋が汚れることがないのである。
「とうぶん社内にいるから、掃除は毎日に変更するように」
と、指示を出し、さらに沙耶を指名しておいた。
「彼女の掃除は丁寧だからな」
と、聞かれもしないのに言い訳までして。
不二基は、人を待たせることはあっても、その逆はない男である。
それがこうやって、今か今かとその時間を待っている。
そして時間きっかりの三時にカードがピッと通る音がした。
「失礼します」
涼やかな声に基の心臓が跳ね上がる。