逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 掃除婦のユニフォームを着た沙耶が、カートを押して中に入ってきた。


「沙耶」


 声が弾んだような気がした。いや、実際自分が明らかに浮かれているのがわかる。


「来ないかと思った」


 デスクから立ち上がり、足早に沙耶の元へと向かう。


「仕事ですから、来ます」


 そう答える沙耶の声は硬い。目も見てくれない。


「まだ怒ってるのか」


 おそるおそる尋ねると、
「怒られるようなことをした自覚はあるんですね」
と、顔を上げた沙耶に眉をひそめられた。

 相変わらず化粧っ気のない顔ではあるが、無垢な雰囲気に、なぜかひれ伏したくなる。


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