逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「あの人と仲がいいんですか?」
「うん。基はどこにいても輪の中心になるタイプで、気がついたら大所帯になってるんだけど、そういうのが面倒になったときは、よくうちの鎌倉の別荘に遊びに来てたな。だから割と仲がいいと言ってもいいかもしれない」
「鎌倉の別荘?」
怪訝そうな表情をする沙耶を見て、美鶴は穏やかに笑う。
「祖父が昔建てた別荘があるんだ。祖母が孫たちに鍵をくれてね。よく集まってたんだ」
(中学生の時……鎌倉……。王子様のような、彼……。)
じっと美鶴の甘い端正な横顔を見つめ、思い出の中の王子様を思い出し、重ねる自分がいた。
当時沙耶は、十一歳になりたての子供だったし、彼もまた中学生くらいだったと思う。
そして王子様の思い出に浸ることもなく母の容態が悪くなり、周囲がバタバタし始めて、夢は夢と消えてしまった。
(私は今年、二十六になる。基は三十になったばかりだから、同級生の喜多島さんも必然的に三十歳。私の四つ上だ。とすると、あの時の彼と同じくらい……。)