逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 美鶴と別れてから、沙耶はどうやって自分の住むアパートに戻ってきたのか、全くわからなかった。

 気がつけば部屋の中が真っ暗で、小さな丸いテーブルの上に置いた名刺を前に呆然としていた。

 喜多島美鶴……。

 女性なら誰でも憧れるような、王子様のような男性だ。


(そして鎌倉に別荘を持っていて、犬を飼っていて、ビスケ……。そんな偶然が重なる?
 確かに彼は絵本の王子様みたいだった。
 すらっと背が高くて、ほっそりしていて、柔らかそうな髪をしていた。はっきり顔を覚えているわけではないけれど、確かにあのバースデーの王子様が成長したら喜多島さんみたいになるかもしれない……。)


 何度もまさかと思いながらも、その度に頭の中で共通点を探してしまう。

 沙耶だって、普段は男性を厳しい目で見ているが、鎌倉の王子様に再会したらと、妄想くらいしたことがある。


(妄想では一目見たらお互いわかるはずだったし、電流のようなものがビビビッと流れて、お互いすぐに夢中になる設定だったわ。まぁ、子供の考えることだから、仕方ないけど……。)



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