一緒に帰ろ。

「水田ぁ？分かんない、どの人だっけ。ってか私専務の横にいたヤツしか覚えてない。」

「あ～美咲に遊ばれてた……あの人は可哀想だったね。美咲酔っ払って説教してるかと思えば、急に甘えだして寄り添ったり。あの人絶対その気になってたよ。」

「は!?何それどういうこ…」
「ちょっとユカ、私はそんなことしてないっつ～の。聡志の前で変なこと言うな！」


あ、聡志(ｻﾄｼ)とは美咲ちゃんの彼氏です。


『そんなことより！水田さんって私は帰りの方向一緒だったから覚えてるよ。確かに……ちょっとかっこいい、よね……』


「りり華ちゃん、そんなことって……」


『うわっ、ごめん！聡志くん、そんなつもりじゃ……』


「あれ～？りり華……もしかしてあんたも？ダメダメ！既婚者なんて止めときな？時間のムダ。」


『そ、そんなんじゃないよ!!私だって結婚してる人好きになるなんて……ないない。絶～対ない！』


（すでにキスしちゃったなんて……言えないなぁ。ま、私だって早く忘れたいし……うん、無かったことにしよ！）



「ごめんね。今の、忘れて？」


ズキッ。

頭の中であの人の声が響いた気がして、胸が苦しくなった。