一緒に帰ろ。
(えっと、水田さんはどこに……)


応接室に入ると一番奥の位置に座って何かの書類を見つめている水田さんの姿を発見。

『し、失礼します。どうぞ。』


震える右手を必死で押さえながらカップを差し出しました。


水田さんはそれまで書類にいっていた視線を、ゆっくりと私に向け、


「うん、ありがとう。」


と、笑ってくれました。


その瞬間、忘れかけていた、あの日の記憶が一気に蘇ってきて。


(ダメだ……。今っ……絶対顔赤いっ!)

急いで他の方々にもお茶を出して、その場をあとにし、廊下にうずくまってしまいました。
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