続・俺と結婚しろよ!
なんだか反則だ。
すっごいすましてやな奴かと思っていたけど、今日の玄さんは普通のお兄ちゃんだ。
あの時の近づけないオーラもない。
それでも、ドラムを叩いている姿は本物だった。
役作りのため、スタッフがあたしにドラムを叩いて見せたりしたけど、全然違っていた。
すごいと思った。
ドラム一つで、あそこまで惹きつけられるなんて。
カリスマって、彼のことを言うのかな。
「なぁ、茜ちゃん……」
玄さんに呼ばれ、ビクッとする。
玄さんはドラムセットに座ったまま、だらんと両手を垂らしてあたしを見ていた。
視線がぶつかり、慌てて逸らす。
それでも、玄さんは続けた。
「昔のこと、悪かった」
え……
「俺、どうかしてた」
え……
「謝っても、許してもらえねぇよな」
そんな……
今さら謝られても。
それに、玄さん覚えてなかったじゃん。
あたしなんて、所詮そんな存在なんだ。