続・俺と結婚しろよ!





なんだか反則だ。

すっごいすましてやな奴かと思っていたけど、今日の玄さんは普通のお兄ちゃんだ。

あの時の近づけないオーラもない。

それでも、ドラムを叩いている姿は本物だった。

役作りのため、スタッフがあたしにドラムを叩いて見せたりしたけど、全然違っていた。

すごいと思った。

ドラム一つで、あそこまで惹きつけられるなんて。

カリスマって、彼のことを言うのかな。







「なぁ、茜ちゃん……」




玄さんに呼ばれ、ビクッとする。

玄さんはドラムセットに座ったまま、だらんと両手を垂らしてあたしを見ていた。

視線がぶつかり、慌てて逸らす。

それでも、玄さんは続けた。





「昔のこと、悪かった」




え……




「俺、どうかしてた」




え……




「謝っても、許してもらえねぇよな」







そんな……

今さら謝られても。

それに、玄さん覚えてなかったじゃん。

あたしなんて、所詮そんな存在なんだ。



< 336 / 629 >

この作品をシェア

pagetop