続・俺と結婚しろよ!






「あれ?あなた、新沢さんですか?」




若い客に言われてビクッとした。

そして、



「新沢咲良がここにいる訳ないですよ」



あたしはわざとらしく笑って、そう答える。

すると、彼女はそうだよね、と笑う。

そして続けた。





「それにしても、なかなか美味しい店ですね。

F展示コーナーも見れたし、満足です」





F展示コーナー?

何それ。

だけど、彼女に聞く訳にもいかず、ありがとうございますと頭を下げる。

そして厨房に戻ったあたしに、賢ちゃんが話しかけた。






「咲良。悪いな、手伝ってもらって」



「ううん、久しぶりに接客して、楽しかった」




そう言ったあたしを、賢ちゃんはいつもの優しい顔で見る。

その笑顔を見ると、やっぱりどきんとしてしまうよ。



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