半世紀の想いを乗せて
1.
今日も私は変わらない日々を送っていた。
朝起きて、学校に行って、授業を受けて、部活をして、家に帰って…
変わったことといえば、進級して受験生になったことくらいだ。
受験生かあ…やだなあ…
何を思ったのか私は、3年前にハマっていたチャットを久しぶりにしようと、パソコンを開いたのだった。
それが、私の人生の分岐点だった。
『こんにちは』
『こんにちは』
『何歳?』
『14歳だよ。そっちは?』
『俺も一緒』
『すごい偶然!どこに住んでるの?』
『愛知だよ』
『私は岡山』
だんだん打ち解けて会話も盛り上がった。
素直に楽しかった。
『俺、よくかわいいって言われるんだけどちょっと見てみて』
そんな話になった。
写真を送りたいからアドレスを教えてほしい、と。
この人…まさかナルシスト…?危ない人…?
私の頭の中をはてなマークと不信感が渦巻いた。
やっぱりネットってこんな人ばかりなのかな…
『お願い』
そんなこと言われてもな…
知らない人にアドレス教えるなんて…
『大丈夫、悪用しないから』
そんなのどうとでも言える。
だけど、彼のことを悪い人だとはどうしても思えないのも事実だった。
悩んだ。
『じゃあ、それだけ送ったら私のアドレス消してくれる?』
こんな質問、ばかげてる。
『分かった!』
ほら、その答えが返ってくることなんて目に見えていた。
口先だけならどうとでも言える。
アドレス消したかどうかなんて確認のしようがない。
私の知らないところでずっと持ってることなんて簡単だ。
そうやって頑張って疑い続けていた。
だけどもう答えは最初から決まっていたのかもしれない。
『*********@****.ne.jp』
『ありがとう!今から送るね』
あー…教えちゃった…
本当に悪用とかされないんだよね?
大丈夫なんだよね?
心配ばっかしてるけど、そんな気持ちとは裏腹にちょっと嬉しかった。
このままメールが続いたりしちゃったりして。
んま、そんなわけないよね、アドレス消してって言ったのは私なんだし。
そう、きっと私は最初から疑っていなかったのかもしれない。
今日出会ったばかり。
少し話しただけ。
顔も見たこともない。
なのになぜだか信用できたんだ。