鼻を摘んで目を閉じて…
 まあ、山本なんてよくある苗字だし、名前にしても特に珍しいってこともないから、記憶の隅にも引っかからないのかも。

 あるいはまるっきり忘れ去られてしまっているのか。




 …15年も前の話だしねぇ。




 うわぁ、あらためて考えてみると、古馴染みも古馴染み、凄い遥か昔の話だわぁ。

 そう、この目の前で難しい顔をして書類を読んでいる男とあたしは、いわゆる幼馴染みってやつだった。

 幼馴染み…というか、イジメっ子とその被害者?

 これだけバタ臭い顔をしていて、こいつは東京生まれの東京育ち、まさに誰だかが言ってたけど、中身はパーペキな日本人ってやつ。

 当時は、母親の母国語であるドイツ語だって怪しかったくらいじゃないかな。

 顔は、まあ、今を見ればそのまんまで、えらく綺麗な男の子だった。

 憧れて…すぐに幻滅してゆく女の子たちも耐えなかったけど。

 とにかく、悪ガキ。

 意地悪。

 それにつきる。

 特に弱いものイジメをするってことでもなかったけど、そこら一体の悪ガキどものボスだった。




 …涼しい顔しちゃって。





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