鼻を摘んで目を閉じて…
 今思っても、なんでこいつに目をつけられたのかわからない。

 今もそうだけど、当時のあたしは、ごく平凡な女の子で、特にこいつに立ちはだかったり、対峙するようなことはなかったんだよね。

 ただ、こいつのドイツ人のお母さんがピアノの先生をしていて、いい年をしたうちの母親がそこの生徒だった。

 ほとんど茶飲み友達と化していて、ピアノを習うよりおしゃべりが目的だったんじゃないのかな。

 ピアノレッスンの他にも、お茶会とかそういうのでよくお呼ばれしていたように思う。

 あたしはわりに大人しいめの子だったから、けっこう友達と遊ぶよりもそんな母親にくっついて大人たちに混じっていることも多かった。

 だから、ホント、顔見知りってくらいで、同い年でもこいつと遊んだことはなかったはず。

 それなのに、ある日を境に、顔を見れば砂をかけられたり、虫をくっつけられたり…足を引っ掛けられて悲惨な目にあったこともある。




 …うわぁ、凄い黒歴史なんじゃない?もしかして。





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