鼻を摘んで目を閉じて…
 喉元を抑え、片目を瞑って咳払いしている浩志に、手の中のものを差し出す。




 「のど飴なんで、もしかしたら甘いものが苦手な人でもそんなに甘くないし、ハッカもキツくないから、どうぞ」

 「………」




 じ~っと凝視されたまま、受け取ってくれない。

 き、綺麗。

 じゃなかった、ハッ。



 
 「えっと、いりません?これ、あたしのオススメなんです。けっこう課内でも評判良くって、喉の調子も多少良くなるんじゃなうかと思うんですけど?」




 いらないんなら、いいけどさ。

 さっさと受け取ってくれないし、いるともいらないとも言ってくれないので、手を引っ込められない。

 なんか、やたらと人の顔をジッと見たり、こっちの様子を不審そうに見てくるよね?

 もしかして、海外に行っているうちにアメリカンナイズだかなんかされて、日本人の言動に違和感でも感じてるんだろうか。

 これで懐かしいとかいう感じだったら、あたしのことを思い出したのかとも思うけど、よくよく考えたら、思い出されても、それでお手々繋いで懐かしがる間柄でもないから、かえって気まずいものかもしれないと思い当たった。




 …あんがい、気がついていて知らん顔してるのかも?





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