鼻を摘んで目を閉じて…
 …いま、何言ったこの男?




 「下手に出直されて…んっ……変なタイミングで来られても、鬱陶しい」

 「………」




 …鬱陶しい?




 いくら正直な気持ちでも、それをズバッと言われて、思わず驚愕だ。

 な、何様よ、こいつ。

 唖然呆然、自失状態。

 あっけにとられて見ていたら、それで了承したとでも思ったのか、さっさと自分は仕事へと戻ってる。

 いやね、あんた。

 たしかに、あんたよりはあたしは遥かに時間に余裕があるのは確かですよ?

 しかし、常識的に考えて、まともな職務についている会社員が、暇で時間を持て余しているなんてことはありえない、と思う。

 必ずしも、すべての人に当てはまるとは言わないけどさ。

 少なくても、あたしはそうだし、社会人としての自覚を持っている普通の人たちは皆、そうなはずだ。




 「すみませんが、私にも仕事がまだ残っています。必要なら、あらためてご都合がよろしい時間に伺いますから、一度戻らせてください。もし、そのお時間さえとれないということでしたら、…仕方がないことですけど」





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