鼻を摘んで目を閉じて…
 あたしが憶えていたことすら、むしろ奇跡の部類…だよね?

 そうでもないか。




 「で、こっちが資料室で、他にわからないことがあったら、あとで君に紹介することになるサポートの眞城くんに聞いてくれたまえ」

 「ありがとうござます」
 



 落ち着いた声音は、男らしくゆったりとした低い声。
 



 …うわ、さすがにあの声は聞き覚えないわ。 
 



 うっかりゾクッとしてしまった好みの声に、内心ブンブンと顔を横にフリ、とにかく気が付けれたくないと注目を浴びる前に退散を目論む。

 が……、

 ポンと肩を後ろから叩かれて、ビクッと飛び上がってしまった。





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