鼻を摘んで目を閉じて…
 「なっ!そ、そんなことないよっ。ちょお~っと、過去のあれこれが蘇って遠い目になっちゃっただけだって」

 「…なんだ、あれこれって」




 新入社員の時に、同僚の久住と付き合って3日で二股かけられてることがわかった時も、去年まで遠恋していた大阪支社の涼介があっちで彼女を作ってフられた時も、そんなつもりはなかったのにうっかり希美にバレて、同期会女子全員の知るところとなってしまった。

 とはいえ、あたしたち同期会メンバーは本当に仲良しだったから、誰ひとり悪意ある噂話とかになんかしなくって、みんなで慰めてくれた。

 久住が北海道支店に飛ばされるように画策してくれたのは、ちょっとやりすぎだったと思うけど、正直同じ営業所で働いてるのはキツかったから、あの時は心底感謝したんだけどね。




 「ま、いいけど。久嶋浩志(くしまこうし)だっけ?彼氏。米州ユニット・ファイナンスグループ二課長とかって、あの若さで凄いよね」

 「…だね」





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