春待ちとれいん
なっ……なんで!

時計を見上げると、針がさしていたのは29分。

貴方は毎朝、28分の電車に乗るはずで……いつもこの時間、貴方はここにいないのに。



ホームの向こうで、彼が何か言っている。



“電車”……“来るぞ”……?

ジェスチャー付きだから、多分間違いない。



飴玉に吃驚して聞こえてなかったけど、確かにさっきからアナウンスが流れていた。



そっか、私が寝てたから起こしてくれたんだ……。



電車で隠れる前に、と頭を下げる。

そして口パクでありがとう、と伝えると──



「……っ!」



彼は笑った。

向日葵みたいな、大きな笑顔で。



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