君がくれたもの
なんで、立って、
そう思っても動かない足。
どうしよう、
そう思った時に、
私の鼻を掠めた、
柔らかい柔軟剤の香り。
顔を上げようとした瞬間、
ふわっと抱き上げられた私の体に、
思わず目を見開いた。
だって、
女にしては162という高い身長の私は、
抱えられたことなんてない。
悠介とも、身長は5センチくらいしか変わらないし。
そして、
私を抱えているのが、
金澤大輝と言うことにもっと目を見開いた。
そいつは、乱れた息を整えようとせずに、
私を隣の空き教室へと連れて行き、
学ランを私の肩にかけると、
教室を出て行った。
教室を出て行く前に見えた金澤の顔は、
怒りに染まっていて、
慌てて追いかけようとした時、
隣の社会資料室から聞こえてくる、
勢いよく開けられたドアの音と、
「なにやってんのー?」
とおちゃらけたように、低い低い声が隣の教室まで聞こえてきた。