君がくれたもの



「……こ…は……ない……ふ…にな…ってる…」

優香の声?
なんて言ってるの?

…聞こえないよ。

「…じょうぶ……は…た…に…まも…り…か……。」


大輝?

なんでそんなに苦しそうなの?

私に言えないことなの?

優香には言えて私には言えないの?

「日菜子。」

ゆっくりと目を覚ますと

私を抱きしめてスヤスヤ眠る大輝。

何故かすごくホッとして、

「…大輝。」

ぽつりと呟くと、

「…ん?」

大輝の掠れた声。

「…好きだよ。」

「…ん、俺も好き。」

大丈夫。

私が大輝を信じなくて、

誰が大輝を信じるの?

大丈夫。

大丈夫だから。

私は強く強く大輝に抱きついた。

そんな私を大輝は守るように強く強く抱きしめ返してくれた。


この時の私は大輝の胸の中で幸せすぎて

大輝が大きな大きな悩みを抱えていること

言葉では言い切れない不安を抱えていることに

気づかなかったんだ。



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