君がくれたもの



野澤は亜美を睨み返すと教室を出て行って

大輝はずっと

「日菜子を傷つけた。」

としか言わない。

気づけば私は胸ぐらを掴んで

「ちゃんと話しなさいよ!」

そう怒鳴っていた。

こんな大輝初めてと思うくらい弱々しく大輝は、

「野澤は、あの人の妹だ。」

私の息を止める一言を言った。

…あの、人って…

無意識に震え始める体。

嫌だ、嫌だ。

思い出したくない。

怖い、怖い、

過呼吸になりかけた私を支えてくれた亜美、

「優香、桐谷さんのためだよ、ちゃんと聞かないとダメ。」

そういう亜美に

私は何故か落ち着いて

こくんと頷いていた。

「あの人、野澤冷夏の、

妹で

その人の情報を掴むために

俺は野澤にキスをした。

そりゃあ、何度も拒んだ。

だけど、

野澤があの人が動き始めた。

日菜子が危ないって聞いて

俺は気付けばキスをしていたんだ。」

そう言う大輝に、私は怒りで震えて、

< 114 / 302 >

この作品をシェア

pagetop