君がくれたもの


「あ、こんにちは。」

とぺこりと頭を下げた女の子に、

「あ、どうも。」

俺も頭を下げていた。

「私、坂野光希って言います。
よろしくお願いします。」

「あ、俺は桐谷大翔です。
こちらこそ。」

というと、ニコッと笑った女の子。

沈黙が訪れた病室、
そんな沈黙に耐えられなくなって俺は、

「あの、退院はいつですか?」

と、気づけば坂野光希ちゃんに聞いていた。

その子は目を見開くと、

「…退院は、ドナーが見つかって手術に成功した時か、

死ぬ時、ですかね。」

と、明るく笑ったその子に胸が鈍くなった。

「…え。」

「あ、いやすみません。
私生まれつき心臓弱くて、
長くは生きられないんです、

って、ごめんなさい。
こんなこと言っちゃって、」

と、目をそらして笑った

「坂野さん。」

「あ、光希でいいですよ。」

「じゃあ、光希、俺も大翔でいいです。
敬語もいらないです。」

「大翔、私も敬語いらないよ。」

「光希、」

「…?」

「死ぬなんて言っちゃダメだ。

言葉は言霊だってばあちゃんに聞いた時があるんだ。

口に出すとそれが本当のことになっちゃうって、

だから、死ぬなんて言わないで。」

俺は、初対面のやつ、それも女相手に何をこんなに必死になってるんだろう。



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