君がくれたもの


そして、

中三の後半。

初めて、2人の浮気現場に遭遇した。

お母さんにお使いを頼まれて、

繁華街を抜けた先のスーパーに向かう途中の、

私と悠介がよく行く喫茶店で、

悠介が私には見せない優しい笑顔で、

麻美を見つめていた。

麻美も今まで見た時がないくらいの可愛い笑顔で笑い合っていて、

その時は、涙も出なくて、

ただ放心していた。

気づけば雨が降り始めていて、

いろんな人にぶつかった。

そして

倒れた時に、

止んだ雨。

顔を上げると、今ではぼんやりとしか思い出せない男の子の顔。

無愛想に

「大丈夫か?」

その声がずっと私の心の中で支えてくれていた。

その男の子は、私より少しだけ背が高くて

金髪の子だった。

いつか、

その人と会えるかもしれない。

私は気付けばそう思っていた。

いつか会えることを生きる意味にして、

けど、
もう、

だめだ。

もう全てが嫌になった。

大切な2人の抱き合う姿なんて、

見たくなかった。



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