君がくれたもの

日菜子side

ハッと目を覚ますと、

私は病院にいた。

嫌な夢を見た。


妙にリアルな夢だった。

大輝が車にひかれる夢。

額に手を当てて、溜息をこぼすとやけに騒がしい病院内。

だけど、そんなのも気にならないくらい、

私のお母さんとお父さんは本当は違う。

夢を忘れて、

その事実だけで気づけば頭は埋め尽くされていた。

そっか、

私助かっちゃったんだ。

死ねなかったんだ。

ぽつりと溢れた涙。

死んでしまいたかった。

肉親さえもいなくて、

しまいには大事な人たちに自分から別れを告げるなんて辛すぎる。

また、ため息をついた瞬間

ガラッと開いた扉。


驚きながらその方を見ると、

「…大翔…。」

掠れた声が出た。

もうお兄ちゃんとは呼べない人。

私の大翔への呼び方が変わってるのに悲しそうな顔をした大翔は

泣きながら私を抱きしめた。

「…お前は俺の妹だ。」

そう言いながら、

「生きててくれてありがとう。」

そう何度も何度も繰り返していた。


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