君がくれたもの


「もしかして、この人の彼女さんですか?」

優しく笑いながらそう聞いてきた女の人に

気づけば笑顔で頷いていた。

「…はい。
世界で一番大切な人です。」

自然と出た言葉だった。

その人は目を見開くと、

優しく笑って、

「…その男の子、ここをよくご利用してくださっていたんです。」

その言葉に目を見開くと、

「…いつも、黄色系の花を買っていたんです。

だけど、あの事故の日は

いつもと違って、

あなたのことを少しだけ話してくれたんです。

その人も、世界で一番大切な人だとあなたのことを言っていました。」

優しく話してくれる店員さん。
その一言一言に
ポツリポツリと溢れる涙。

その人は優しく笑うと、
何かを思い出したように、

奥へと行くとすぐに戻ってきた。

その手の中には、

紫の綺麗な花、

15本の花束だった。

「この花束、あの人が15ヶ月記念日にって、嬉しそうに買ったんです。

だけど、

事故に巻き込まれてしまって…」

震える声…。

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