君がくれたもの


危なかったー。と思いながら暖簾をくぐって出ると、

ぐびぐびコーヒー牛乳を飲む大輝。

「お、日菜子浴衣かわいい。」

と私の頭を撫でる大輝。

そして、はいっと渡して来た
いちごミルク。

「ありがとう、あ、大輝も浴衣かっこいいよ。」

といえば顔を赤く染めて私の頭をクシャクシャとした。

部屋への道のりをゆっくりと歩いていると、

「…ごめんな、沖縄に連れて行けなくて。」

大輝の悲しい声に、

え?と顔を上げた。

寂しそうな横顔。


沖縄、修学旅行のこと…?

ズキリと痛んだ胸。

「…本当は沖縄連れて行きたかったけど、
高校生のバイトなんてたかが知れてるよな。」

と、自嘲気味に笑った大輝。

修学旅行のこと、気にしてくれてるんだ。

大輝の優しさに胸がきゅっと苦しくなったとき、

ちょうど中庭みたいなところが見えた。

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