君がくれたもの


次の日、まだダルさは残りつつ俺は日菜子の家へと向かった。

改札には桐谷と書かれていて、

インターフォンを鳴らすと、

「はーい。」

いつものおばさんの声。

ガチャっと開いた扉、

俺の姿を見た瞬間目を見開いたおばさんは穏やかに笑った。

「…いらっしゃい、大輝くん。」

中に促されて入るとシーンと静まり返る家。

リビングに通されて、

ダイニングテーブルの椅子に座るように言われて俺は静かに座った。

「今は、ごめんね。

日菜子はこの家にいないの。」

無理やり上げた口角。

「…日菜子は今どこにいるんですか?」

そう聞くとおばさんは、

静かに首を振った、

「…私の口からは言えない。

大輝くんは日菜子を忘れて大輝くんの人生を歩んでちょうだい?

日菜子は、大輝くんが弁護士になるのを望んでいるわ。」

ふわりと笑ったおばさんは日菜子の叔母さんということもあり、

笑顔がどことなく似ていた。


< 278 / 302 >

この作品をシェア

pagetop