君がくれたもの


「…卒業おめでとう。」

と笑ったおばさんは俺に花束を渡してきた。

笑いながら、

「…ごめんね、こんな日まで来てもらっちゃって。」

そう儚く笑ったおばさん。

「…ありがとうございます。

いえ、俺が来たくて来てるだけなんで。

毎日毎日すみません。」

と言って謝ると、

「なんで謝るのよ?
私は嬉しいわよ。

日菜子をこんなに愛してくれる人がいるんだもの」

とニコニコ笑ったおばさんは、

不意に真剣な顔をして、

「…大輝くん、今日は特別な日だから教えてあげる。」

そう言って、

「……日菜子は妊娠してるの。

誰の子かは言えない。

けど、日菜子はその子を育てるために病院に入院してるの。」


…頭が真っ白になった。

誰の子か言えないってことは俺以外のことも、

いや、そんなはずない。

だけど段々と潤んでいく瞳。

「…大輝くんの頑張り次第で日菜子に会えるか会えないかは決まるわ。」

そう言って笑ったおばさんは、

「あら?バイトの時間は大丈夫?」

と言ってきて時間を見ればバイトの時間。

俺は、お邪魔しましたと言って日菜子の家を飛び出した。


< 299 / 302 >

この作品をシェア

pagetop