『N』ー忍びで候うー
彼女たちが去ってしまうと、しばらくして郷太が帰ってきた。

「どこか行ってたの?」
「どうして?」
「だってそれ。」
郷太の抱えたジュースは氷が解けてだいぶカップの表面に汗をかいていた。

「ふふ、今日の成果だね。観察力ついたんじゃない?」
「それくらい普通だよー。」

あんまり馬鹿にされてるようなのであたしは郷太の脇腹をつついた。

「あ、さっきね、郷太みたいな子に会ったよ。」
「ん?僕みたいって?」

「秘密!」

あたしは郷太みたいな大型のプードルに会ったことは内緒にしておくことにした。だって、大型犬みたいだ、なんて、言えないから。

だいぶ薄くなったジュースをぐるぐるかき混ぜて一口飲んだ。

こんなに氷が溶けるまで、一体どこに行ってたんだろ?






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