『N』ー忍びで候うー
かちゃ、、

「一花?」ノックをせずに郷太は扉を開けた。

「郷太、戻ったのか。」

眠る七花のほうを向いたままの一花が、声だけを返した。


ベッドに寄る。

「これ、頭首から七花にって。ここは代わるから、少し寝てきたら?帰ってからまだ寝てないんだろ?一花。」

「俺は大丈夫だ。」それを受け取り、サイドテーブルに載せた。

「そう?、、、ふう。わかった。」

石のようにじっと傍を守る一花をそのままに、郷太は背中を向けた。

扉を閉める前にどうしても言っておきたくなった。
「あのさ、休みたくなったらいつでも言って、代わるから。

、、、俺たちだって、七花のこと心配してるからさ。」

ぱたんーーー、


扉を閉め、郷太は表情を曇らせた。

『なんで僕、看病してるだけの一花にこんな態度を、、看病なんて誰がしたっていいじゃないか。七花が元気になったらそれで。これじゃまるでわがままな子供みたい、、、』

眠る七花を見つめる一花の横顔が浮かんだ。

『なんでこんな、、イライラしなきゃいけないんだよ、、』


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