『N』ー忍びで候うー
「、、ん、、」



微かに瞼が動いた。


「七花?」


『あたたかい、、』

瞼の裏に暖かい光を感じた。

ほっとするような、、

やわらかいような、、



、、お日さまの匂いーーーーーー





「っ痛、、!」
顔じゅうに痛みが走った。

「ぅ、、」
頬が、皮膚がぴりっと切れるような痺れるような痛み。

耳のほうまでじんじんする。
顔に触れようとした両手を掴まれた。

「七花。」じんじんする耳にはっきり聞こえた。
あたしを呼ぶ声。


「一、、」ぶわっと涙が溢れ出そうになった。
薄く開いた目に一花の姿が見えた。

「一花、、ぁっ」
涙が滲みて鋭い痛みが増した。思わず顔を歪める。

「一花、あたし、、思い出し、、あたし、、」
顔中がぴりぴり痛くて目も開けていられなかったけど、あたしは握られた手を離さなかった。

やっと安心できる場所にいるんだと思うと、涙が止まらなかった。
口を開くのもやっとだった。


「大丈夫だ。ここにお前を傷つけるやつはいない。ここは山のロッジだから、安心して休め。」
「山の?」
「そうだ。」
握られた手が温かかった。

「ぁぁ、、つ」顔が、、頬が熱をまし、頭がくらくらしてきた。

「今薬を塗ろう。少し沁みるが、楽になるはずだ。」

顔中にべったりと薬が塗られていく。

「痛っ、ぃ、、」
横たわったままのあたしに一花がそっと薬を塗ってくれている。

「明日には腫れも引くだろうが、、痛むか?
もう少しで塗り終えるからな。」

コーチのように訓練してくれていた時よりも、夜桜の下で助言してくれた時よりも、
一花の口調が優しい気がした。

「あとは、化膿しないようガーゼをしておこう。」

すぐ近くに息がかかる。
びくっとして目を開けた。

「薬が目に入るといけない。目は閉じていろ。」

一花の顔がとても近くにあった。

鼓動が速くなる。


どくん、、どくん、、、

どく、どく、どく、、

もっと、、







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