『N』ー忍びで候うー
こんこん、思ったより早く一花が戻ってきた。

匂いに浸っていた七花は慌てて掛け布団を引きずりあげた。

「どうした?具合が悪くなったのか?」

「違うの、、ぁ、、思い出したことが、、あったの。」

「なんだ?」
一花は隣に座ると優しい眼差しで七花の言葉を待ってくれていた。「ゆっくり、話せるだけでいい。」

頷いてみせる。
「あたしを助けてくれたのは、、一花よね?
隣にいた男の人は、、」
七花は目を細めた。

「おじいちゃまだったの?
あの人は?おじいちゃまは??無事なの?」

七花の瞳から涙が溢れる前に、一花の手にしたティッシュがそれを押さえた。
「傷に沁みる。なぜ俺が助けたと思う?」
「一花の匂いがしたの。気を失う時に。」

ぽんと頭に大きな手が載せられた。

「お前を抱いてきたのは俺だ。
それから、隣にいた男性が先代だ。」
七花の目にさらに涙が溢れた。

「長く拉致されていたからやつれていたが、先代も無事だ。今は病院の検査や治療を受けているが、それが落ち着けば会えるはずだ。
安心したか?

お前を助けたのは、俺だけじゃない。
みんなでお前と先代を助けたんだ。
お前が連れ去られ、みんなお前を心配していた。」

七花の瞳は潤みっぱなしだった。
もらったティッシュを自分で目頭に当てる。



「それにしても、俺に匂いがあったとは、、
忍者として、、」
一花の顔が曇ってきた。

「あ、でも、なんとなくそんな気がしただけで、、」
「どんな匂いだ?」真顔で見つめられる。

「え、、」

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