『N』ー忍びで候うー
「体力の無さにうなだれているのか?
心配するな。俺が仕込んでやる。」

「そ、それは、、っ。」
今すぐ逃げ出したいような気持になる。

「先代を救いだす。助けになりたいんだろう?」
鋭い視線が向けられた。

そうだ、そうだった。あたしがこの怖そうな一花さんから逃げ出さないのも、嫌々でもここまで来たのは、、おじいちゃまを救いたい、だからだもんね。。

きゅっと手のひらを握りしめた。


あたしだって、負けない、、っ!

瞳にぐっと熱意を燃やし、一花さんを見つめ返す。
「そうだ。忘れるな。」
「はい!」

「どれくらいの期間になるかわからないが、とりあえず俺についていろ。」
「はい!」
もうなんだか体育会系のような返事を返す。

ふっと鋭かった目元が緩んだ。
思わずその顔が可愛くて、、、


きゅん。。



三回目のときめきの音がした。

どうしてこうなっちゃうんだろ。。


「何二人で見つめ合ってるの〜?」
突然前方から声がした。軽い声だった。

「何の話だ?、、着いたぞ。」
いくつ目かのログハウスの前だった。中は温かそうな明かりが灯っている。
足をかばうようにそっと降ろされる。

冷たそうに見えてちゃんと助けてくれたり、喝を入れてくれたりするんだなぁ。。

「ありがとう、一花さん。」
あたしが軒先の手すりにつかまると、一花さんの手があたしから離れた。

「足、怪我したの?」
お店に残っていたはずの郷太くんがそこにいた。ひょこっとあたしの足元にかがむ。
「ああ、郷太、こいつの足を見てやってくれ。皮がめくれて血が出てるようだ。」
聞いてるだけでもまた痛みがぶりかえしてくる。思わず顔をしかめてしまう。
「ひどく痛そうだね?ok、任せて。」
ひょいっと今度は郷太くんに持ち上げられる。
あっと言う間にお姫様抱っこに!

「きゃっ、いや、もう、大丈夫、ほんとにっ、中に入るだけなら、、」
「大丈夫、遠慮しないで。役得、役得♪」

降ろしてほしいのに、、、
一花さんを見る。

「郷太。」
降ろして、、

「俺は一旦、途中で置いて来た荷物を取りに行ってくる。」
「了解。」
「え、今から戻るの?もうこんなに暗いのに、、」

一花さんの顔がちょうどあたしの顔と同じくらいの高さになってる。
郷太くんのほうが、少し背が高いみたい。

「この山には慣れているから、心配はいらない。郷太にしっかり診てもらえ。」
そういうと一花さんはさっと消えてしまった。

どんどん暗くなってきてるのに。。

「心配しなくても大丈夫だよ。一花は子供の時からここで育ってるから。」
にこりと微笑む郷太くんの腕に抱かれ、そのままログハウスの中へ運ばれていく。



今日は何だか抱っこされっぱなしみたい??
忍者云々は置いといて、、
今までの彼氏いない歴を振り返ると、、

この今日のときめきを
もっと人生にまんべんなく振り分けてほしかったなぁーーーー

あたしは嘆きか喜びか自分でもよくわからないため息をついていた。

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