『N』ー忍びで候うー
そのあと、一花は忍者の町を隅々まで案内して歩いてくれた。町と言っても、今は数年前に作り直したというログハウス風の建物が輪を描くように6棟、その中央に倉庫風の建物が1棟、あとは竹林が周りを囲んでいるだけだった。
以前はこの竹林のあたりにも家があり、仲間も大勢いたのだと言う。
ログハウス風の建物は、今あたしが泊まっている宿泊用のものや、訓練用、貯蔵用などに分かれているらしかった。


「一花の両親もここで忍者をしていたの?だから小さい頃からここに?次郎も?」

「俺たちは小さい頃に親を失くしている。」
「ぁ、、」

「気にするな。顔も覚えていない。」
竹林の方を見やる。

「先代が、俺たちには親代りだった。」
鼻の奥がツンとしてきた。
「おじいちゃまが、、」
目の前の大きな背中が淋しそうに見えた。

「だから、孫のお前を危険に巻き込むことは反対だったんだ。だが、今はお前の意志を尊重している。
先代が戻ったら、、
忍者になった孫を見て何と言うかな。」

横に並んで見上げた。
一花の瞳は空におじいちゃまを見ているようだった。

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