『N』ー忍びで候うー
かわいらしい花が咲き始めた公園、噴水のそばのベンチに次郎は座った。キャップを目深にかぶり、顔は見えない。
親子連れの散歩している姿が周りには多く見られる。
携帯をとった。
「連絡が来た。近々拘束している場所を変える動きがあるらしい。」
隣に人の座る気配。
「確かか。」
「4月に創設80周年を記念したパーティーが開かれる。招待客も有名人を呼んで大規模に行うらしい。しかも場所は今回は自社ビルでだ。だからその前に移動させるはずだ。・・実行だ。これを逃す理由はない。」
次郎は携帯を切った。
「上に伝える。一旦待て。」
隣から聞こえた。風が吹き、前髪が表情を隠した。
次郎はすっと立ち上がり、伸びをした。
薄手のグレイのパーカーを羽織り、背中にはリュック。大学生風の恰好をしている。
ふと、思い出したように口元を手で押さえた。
「女の子には優しくしなきゃな。」
隣から気配が消えた。
一花はゆっくり振り返った。
暖かな日差しに誘われて、若者たちがまちまちに歩いている。彼らは後方に城のようにそびえる大きなキャンパスから吐き出されてくるようだった。次郎の姿もこの中に紛れているのか、もう見えなかった。
『どこから話が伝わるんだ。。まったく。』
一花も今日は真っ黒な格好ではなかった。公園に紛れても不自然ではないよう、ランナーに変装していた。
「・・走るか。」
苦しそうな七花の顔が浮かんだ。
思考をとっぱらうように走り出す。
イヤホンを耳にした。
つながった。ほとんど唇を動かさずに話す。
「これから向かう。頼みがある。」
親子連れの散歩している姿が周りには多く見られる。
携帯をとった。
「連絡が来た。近々拘束している場所を変える動きがあるらしい。」
隣に人の座る気配。
「確かか。」
「4月に創設80周年を記念したパーティーが開かれる。招待客も有名人を呼んで大規模に行うらしい。しかも場所は今回は自社ビルでだ。だからその前に移動させるはずだ。・・実行だ。これを逃す理由はない。」
次郎は携帯を切った。
「上に伝える。一旦待て。」
隣から聞こえた。風が吹き、前髪が表情を隠した。
次郎はすっと立ち上がり、伸びをした。
薄手のグレイのパーカーを羽織り、背中にはリュック。大学生風の恰好をしている。
ふと、思い出したように口元を手で押さえた。
「女の子には優しくしなきゃな。」
隣から気配が消えた。
一花はゆっくり振り返った。
暖かな日差しに誘われて、若者たちがまちまちに歩いている。彼らは後方に城のようにそびえる大きなキャンパスから吐き出されてくるようだった。次郎の姿もこの中に紛れているのか、もう見えなかった。
『どこから話が伝わるんだ。。まったく。』
一花も今日は真っ黒な格好ではなかった。公園に紛れても不自然ではないよう、ランナーに変装していた。
「・・走るか。」
苦しそうな七花の顔が浮かんだ。
思考をとっぱらうように走り出す。
イヤホンを耳にした。
つながった。ほとんど唇を動かさずに話す。
「これから向かう。頼みがある。」