『N』ー忍びで候うー
あたしの気持ちが落ち着くと、改めて次郎を紹介された。前に聞いていた、一花と兄弟のように育ったという彼だった。あと、まだ会ったことのない仲間に『四ツ谷』という人がいると聞いた。
次郎は郷太と似たような、今風のおしゃれな男の子に見えた。その今っぽい雰囲気が一花とは全く違って見えた。一花とは血の繋がりは無いというから、全く違って当然なんだろうけど。
次郎も「先代は親みたいなものだから。」と言っていた。先代を救い出すことへの二人の熱い想いが伝わってきた。


お互いの紹介が終わる頃、六車の携帯に着信があった。頭首からだった。
「七花、あなたと話したいそうですよ。」
どうしてわざわざ六車の携帯に掛けたんだろうと首をひねりつつ、それを受け取る。
「もしもし?うん、うん、今から?わかった。うん、これから向かえばいいのね?うん、大丈夫、ひとりで行けるよ。」

電話の内容は、今すぐ家に戻って来て欲しい、待っているからというものだった。
もう家を空けたまま3週間ほどになっていたから、パパとママがさすがにおかしいと思っておばあちゃまに詰め寄っていたのかもしれない、そんな考えが浮かんだ。

「あたし、すぐ家に帰らなきゃならなくなって。」
「ひとりで大丈夫ですか?」
「うん、平気。」
「今日はほんとにごめんね。」
次郎が片手を小さく顔の前に出して謝って見せた。
「あたしも、、ごめんなさい。まさか本当に投げ飛ばせるなんて。」驚き以上の結果だった。
「いい筋してるよ。」
お互いに笑い合う。
「今度は何かあれば、、助けを呼べ。」
まっすぐな一花の瞳に頷き返した。
「そうですね、何かあなたの護身用に道具を作ってみますよ。」とは、研究者の三田の言葉だった。

「久しぶりの家なんですから、ゆっくりしていいんですよ。頭首が呼んだんですから。」
「ありがとう!」

あたしは急いでお店を後にした。


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